どうも落書きを見るに、園児の悪戯書きとは少し違うような。
卒園生を招いた落書きイベントでも開いたのでしょうか。
まるで葡萄園にでも来たかのような、見事な蔓天井。
光は極力遮りつつ、風は通して換気○、中々の高機能です。
都会に在りがちな鉄筋コンクリートの園舎ではなく、
木造の園舎は、廃墟となっても画的に嬉しい代物。
ただし劣化や崩壊は数倍早いという、諸刃の剣だったり。
園児たちの、ささやかなプライベート空間。
その中に居るのはねんどか、はたまたクレヨンか。
卒業作品を造った卒業生達が、その作品を見る期間はごく僅か。
逆に在園生は、名前も知らない人達の似顔絵を見続ける訳で…。
子供の嬌声さえも騒音として苦情が寄せられるという、現代社会。
これだけ広い敷地の幼稚園なら、心配も無いのですが。
園児が世界の中心という事で、トイレも当然ミニサイズ。
私が通っていた幼稚園はどうだったかな…、既に記憶は靄の中。
美大の付属という事で、通常の授業に加えて美術と音楽が必修。
もちろん後から学ぶ事も出来るけど、やはり小さい頃から
慣れ親しんでいた方が、良いに越した事はありません。
園舎の裏に、ひっそりと並んでいる小さなイスたち。
このイスに座っていたであろう園児達も、今は立派な大人だ。
当物件は既に解体されて容は残っていませんが、
卒園生達の記憶の中には残されている事でしょう。
勿論それは廃墟ではなく、現役当時の姿として…。
私が廃墟の道を進み始めた頃から、既に色々と有名だった物件。
当時は主に心霊スポットとして取り沙汰されていた様ですが、
訪問時、特にそういった雰囲気は感じられませんでした。
むしろ、侵食する植物や崩壊の美を感じ取る事が出来る物件で、
今思えば、廃墟として貴重な存在だったと思います。
当幼稚園は、某美術大学の付属として1968年に開園しました。
1990年、大学の校地移転に伴って当幼稚園は閉園となり
以後、20年以上に渡って廃墟としての道を歩んできた事となります。
少子化が叫ばれる現代において、逆に子供一人当たりの教育費は
増加傾向にある事から、当物件の様に私立の幼稚園が
廃墟になるようなケースは、余り無いのではないかと思います。
逆に公立の幼稚園は、特に地方で過疎化のあおりも受けて
相当数が閉園に追い込まれ、解体、転用、または廃墟化の道へ。
学生時代に比べて明確な記憶の残っていない園児時代とはいえ、
思い出の建物が朽ちていく様は、やっぱり寂しさを感じますね…。