現役当時は、さぞ立派な家だったろうに…。
今はもう何時倒壊してもおかしくありません。
先程の家もそうですが、何故かフルオープン状態。
林間独特の湿気た空気が吹き抜けてゆく。
いつまでも朽ちる事の無い酒瓶たちは、
石垣と共に、集落の歴史の語り部となる。
木々によって隠されるように建つ家屋。
ノスタルジックよりもホラー感の方が強め。
当時の生活を思わせる残留物も有った筈ですが、
何故か殆ど写真に収めなかった私自身に喝。
大阪万博の記事が載る新聞、日付は昭和43年。
此処が廃村になったのは昭和40年代半ばなので、
時系列は概ね合致するところです。
集落の外れにひっそりと墓地が在りました。
山に還りつつある集落の現在を、御先祖様は
どのような想いで眺めているのでしょうか…。
都内にある貴重な廃村として、割と有名な物件。
ただ廃村の常としてアクセスが悪いため、
訪問の際には1時間近くの登山を強いられます。
現役当時の住民の苦労が偲ばれるところです。
ちなみに当集落は、相当に長い歴史を持つ事から
過去に民俗学者が訪れて生活・風習を伝え聞き、
それが現在の民俗学の礎になったとも言われています。
長い歴史の中で、これまで幾多もの時代の流れを
乗り越えてきた当集落でしたが、今回ばかりは
時代を乗り越える事が出来ませんでした…。
それだけ今の時代は、昔とは大きく違います。
進みゆく時代の中で、零れていった何かを
拾い上げていきたいと、私は思います。