全般的に陰湿な物件ですが、階段付近だけは若干明るめ。
採光用の窓が良い仕事をしてくれているお陰です。
暗く長い廊下を進むのは、慣れていてもやっぱり怖い。
扉から突然何かが飛び出てきた日には、間違い無く失禁もの。
広さの違いは有れど、基本的には似たような和室が並ぶ。
窓の外は雑木林で、展望も風情も無いという辛さ。
ここで気になったのが、各部屋とも厨房が付いていること。
湯治で長期滞在する人をメインターゲットにしていたのか。
温泉の効能について、何だか色々と細かく書かれています。
湯治向けの宿であるなら、確かに此れは重要なポイント。
浴場は別棟となっており、男湯も女湯も広さは大体同じ。
湯治目的なら演出は要らないし、特に可もなし不可もなし。
いくら斜面建築とはいえ、窓と地面が流石に近すぎる…。
土が部屋に入ってきてもおかしくない、ていうか入ってる?
建物の裏は今でこそ雑木林ですが、かつては庭だったのかも。
全く子供向けの施設では無いのに、置かれた遊具の立場は…。
去り際に振り返った建物の姿は、何だか思ったより大きかった。
華は無くても良い仕事をする、名脇役的な印象の当物件でした。
伊豆の某温泉地、その外れにひっそりと佇む味気ない建物。
商売っ気の無さから、保養所もしくはホテルの寮かとも思いましたが、
何故か部屋に厨房が有る点と、温泉を推している点から、
湯治を目的とした、長期滞在型の宿ではないかと考えられます。
ちなみに料金は、大人1泊2食付きで7515円というお値段。
朝食のみの場合は4940円となり、大分お安くなります。
そのぶん周りに何もない立地や、娯楽の不足は致し方なし…。
廃墟年齢を断定出来る資料が無く、またネット等での情報も無く、
閉鎖された時期については、状態で推測するしか有りません。
2008年に初訪問した時から、建物内部は一部崩壊しており、
その時点で閉鎖から10年程度と仮定すると、現時点において
少なくとも、20年以上の廃墟年齢ではないでしょうか。
廃墟としては、大きな飛び道具こそ持っていないものの
基本的な要素はしっかり備えており、また静かな環境や
陰湿な雰囲気なども、らしさという点で私的に好印象です。
ただ現役時代の評価については…、推して知るべし。
いかに湯治の宿といっても、内外ともに演出が足りず、
逆に貸別荘的な使い方をするには、立地が悪すぎる。
料金の安さは確かに認めますが、逆に死期を早めたのでは…。
そんな訳で、建物や土地が再利用される見込みは全く無く、
今後もしばらく当物件は、此の地に在り続けるでしょう。
折角なので、また忘れた頃にでも再訪したいと思います。