竹によって貫かれた部屋は、見るも無残。
基礎を固めていなかったのか…。
まともに光合成が出来る場所とは思えませんが、
その葉は鮮やかな緑…、植物の力おそるべし。
どう見ても到達できそうにない中宴会場。
僅かな距離を数十分かけて慎重に進む。
その先で得るものは、ほんの少しの満足感。
廃墟年齢に比例して落書きにも時代を感じます。
横浜からの参上とは…お疲れ様と言っておきましょう。
もはや天変地異クラスの崩壊度。
どれだけ貧弱な造りだったのか、推して知るべし。
中規模以上の廃ホテルには大概設置されているプール。
プール=集客など、そう簡単には行かない事が
廃墟という結果で証明されています。
開いた瞬間に落ちるエレベーター、洒落になりません。
屋上から眺める景色は、あの頃と変わらない筈なのに…。
そして某日、菊○ホテルは遂に人の手によって
建物としての寿命を終えました。
伊豆を代表する物件がまた一つ、消えてしまった訳で。
部屋数70で、収容人数は350人を誇る巨大規模。
複数の宴会場と複数の浴場、バーやプールなど娯楽も充実し、
その眺望は伊東随一との呼び声も高い。
伊東の一夜は、此の菊○ホテルに任せれば良い…。
ギャップという言葉があります。
美辞麗句で紹介されたホテルに着いてみれば、
其の設備は全て古臭く一時代前のセンス。
増築を繰り返した内部は階段が多く、まるで迷宮のよう。
窓からの景色は山とマンションが大部分で、海は横目から。
狭い道と急坂を越えなければ到達できない立地など…。
慎ましく経営していれば危機も乗り越えられた筈が、
繁栄時の設備投資が仇となり、結果倒産に至る。
まさにホテル廃墟としての王道と言えますね。
初訪問時の私は未だ廃墟歴も浅い状態で、
危機管理に甘い所が有ったと記憶しています。
そんな私を一から鍛えてくれたのが、此の廃墟でした。
暗い内部に踏み抜く寸前の床、崩落した天井…。
神経を擦り減らさないと、とても前には進めません。
この経験が糧となり、今に生かされています。
ありがとう、そしてさようなら、菊○ホテル。