食事だけじゃなく、店側は土産でもお金を落として貰いたいところ。

ただし越前ガニともなると相当に値が張り、客側もおいそれと手が出ず。

景気の良い時代は、これでも飛ぶように売れていたらしい…。



団体客用に記念撮影もできるとか、後で行ってみましょう。





1階の厨房スペースは割とがらんどうですが、流石の広さ。

調理人とカニが火花を散らして闘った、戦場の跡。




海産物メインの調理場なだけに、衛生管理には特に厳しかったはず。

食中毒なんかが起きたら、本当に洒落になりません。




1階のメインである海産物売り場には、流石に商品は有りませんが

残置された設備が多く、往時の雰囲気を感じる事が出来ます。




無人の空間で未だに自己主張を続ける大漁旗が、何だか虚しい…。





消費税がサービスとは一見太っ腹ですが、そんな余裕など無かったはず。

単に内税方式で値付けしていた、というオチだったりして。




カニの他、北陸の様々な海産物や土産物が売られていた訳で。

業務形態としては、食事処というよりドライブインになるのでしょうか。




先程行き残した展望台に行ってみると、其処には何故か狸の置物が。

ここまでカニ尽くしで来たのに、肝心な所でカニじゃないのは

狙ったジョークなのか、それとも単に詰めが甘いだけなのか。



眼前に広がる日本海の景色は、あの頃と何も変っていない。

変わってしまったのは、灯りも人も消えてしまったカニハウス。

旅情と無常のダブルパンチで、私の記憶に色濃く残る物件でした。




日本海沿岸部を車で走行中に、偶然目についたカニの看板と廃れた建物。

付近に民家や観光施設は少なく、立地的にはドライブインの趣きです。

特筆すべきは、そのサービスがカニに特化していることで、

食事・宴会・土産・各種掲示物と、どれもカニ尽くしの呈でした。


海沿いの割に外観は傷んでいない様ですが、内部は結構荒れていて

人為的な破壊をきっかけに、自発的な劣化も徐々に進行中といったところ。

廃墟年齢は、およそ10〜15年ぐらいではないかと予想します。


廃墟としては、熟成に若干の物足りなさは感じますが、

カニに特化した物件という点は、他には無い強みです。

残留物が多く往時を想像できる、という点も有って

私の中では、妙に印象に残る物件であると言えます。


最後に、何故このカニハウスは廃墟となったのか。

不景気で、高額なカニを土産で購入する人が減った事は

容易に想像出来ますが、それ以前の問題として、

単純に、物件周辺の交通量が少ない様な気がします。


周辺の人口が薄く、また集客力のある観光も薄い…。

日本海の眺望と海の幸が売りなだけの道路では、

あえて遠回りしてまで、客は其の道を通ってくれません。

ドライブ自体がレジャーとされた昔の時代ならば、

シーサイドラインというだけで皆通ってくれたのに…。


俗に言うレジャー多様化の中で、ドライブ自体がレジャーという

考え方は薄れ、単純に移動の手段と言う考え方が強まりました。

目的のレジャー地まで一直線、その経路は殆どが高速道路で、

立ち寄り場所として儲かるのは、SA若しくはPA…。


今回の物件は、カニと言う他に無い武器を持っていましたが、

それでも結局、時代の波に逆らう事は出来ませんでした。

今後も、一般道のドライブインに厳しい時代は続きます。

未だ現役の施設は、その灯りを消さぬよう頑張ってほしいですね…。




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