2012/秋 訪問



二○変電所


とある国道を走行中、道の脇に突如現れたコンクリート遺構。

先を急ぐ身でしたが、どうしても気になり迷った挙句、引き返す事に。

手元の古地図を見ると、そこには変電所のマークが有りました。



開かれたマシンハッチから、植物が堂々と出入りしている状態。

建築年次は勿論のこと、廃墟としても相当の年季が有りそう。




がらんどうな上に天井も高い、広々空間となっています。

現役時代は、変電設備が所狭しと並んでいたはず…。




人の所為か、風の所為か、はたまた植物の所為か。

どの格子窓にも、硝子は殆ど残されていません。




一階部分は先程の広々空間のみで、二階への階段は見当たらず。

しょうがなく外から斜面と藪を越えて、どうにか二階の入り口へ。




旧い廃墟の常として心霊の噂も聞かれる物件ですが、

なるほど見た目の雰囲気としては、ホラーゲームも真っ青。




凝った造形や緑の浸食、余分な残留物も無く、

ただ単純にコンクリート廃墟の味のみで勝負する物件。




この落書きをした人は、既に還暦を迎えている可能性も有る訳で…。





未成物件の様な、人の絡まない冷たさを感じます。

それが当物件の最大の特徴であり、長所とも言える所。




建物の大きさに比べて見て回る箇所は少ないものの、

ストレートな廃墟感が印象に残る、好物件でした。




県境に程近い山坂道にて、突然出会った変電所の廃墟。

変電所とは言っても、証明できるような残留物は殆ど残っておらず、

ノスタルジックという意味では物足りない物件ですが、

建物自体の劣化や旧さが、廃墟美を醸し出しています。


廃墟年齢として、こちらも詳細を示すデータは有りませんが、

本文中の落書き写真よりの推定で、最低でも45年以上…。

土地の活用が難しい立地につき、まだ暫く現存するのではないかと。

ただ国道沿いである事から、崩壊により影響が出る場合は

突発に解体される可能性も否定できません。


なぜ此のような場所に変電所が造られ、また廃墟化したのか。

物件の直近を走る国道が、大きく関係しているものと思われます。

群馬と新潟を結ぶ、初めての自動車道となった当国道は、

両県間に長大なトンネルを通し、1959年より供用が開始されました。

もちろん工事の際には多大な電力を消費した筈であり、

当変電所も、重要な役割を担っていたものと考えられます。


工事の終了に伴って当変電所の役割も薄くなり、

いつしか当変電所は閉鎖、以後放置され現在に到る…、という寸法です。

勝手な推理でしたが、廃墟年齢的にも割と辻褄が合っている気がします。

なぜ早々に解体しなかったのか、という疑問は残りますが、

この手の物件は謎が多い方が、得てして面白いものです。

全てを知ると興味を無くしてしまうのが、人の常なので…。




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