2009/夏 訪問
旧陸軍 岩○火薬製造所
長閑な昼下がりの公園、私は其の奥に歩を進める。
この公園一帯は、旧陸軍の火薬工場であったという…。
ダイナマイト発祥の碑が、其の事実を今に伝えています。
誰の目にも触れない、公園の奥に眠る遺構。
樹木と夏草に阻まれた其の先に見えるもの。
火薬庫か何かでしょうか…、相当の年月を経過した建物です。
土塁で囲まれた窪地の中に建てられています。
終戦後から時が止まったままの当物件。
あの日も同じように蝉は啼いていただろうか。
窓から中を覗いてみると、内部はこんな感じ。
もちろん今となっては火薬の匂いなど、する筈も無く…。
土塁で区切られた各敷地を、連絡用のトンネルが繋ぐ。
連鎖的な爆発を防ぐための特殊な立地構造です。
通路とは違うトンネルも見受けられました。
緊急時の避難所的な役割でしょうか?
こういった倉庫的な構築物が随所に見られますが、
緑が邪魔をして近付くのは容易ではありません。
戦跡もしくは廃鉱山のような趣を感じる物件。
木陰が多い為か、妙な涼しさを感じます。
基礎は緑で埋まり、壁だけが墓標のように立っていた…。
公園を中心とした敷地に、かつて存在していた火薬工場。
遺構が、現役企業や研究所の敷地にも跨る形で残されています。
とにかく草木が多くて洒落にならない為、探索は一苦労でした。
見る事が出来たのは一部分でしたが、火薬工場独特の構造と
歴史ある物件の雰囲気は、存分に味わう事が出来たと思います。
ダイナマイトというと、どうしても軍用を思い浮かべますが
実際には鉱山やトンネルの掘削に使われる事が多かったようです。
岩○火薬製造所で製造された火薬やダイナマイトは、
各地で日本の産業を支える大きな役割を果たしていた事でしょう。
私は感謝と惜別の念を胸に抱き、その場を後にしました。