2009/夏 訪問
旅荘 ○子
至って普通な住宅街の中に、廃な匂いのする看板を発見。
どう見ても営業中とは思えないのですが。
導入路を暫く進むと…、出ましたジャングル物件。
真夏の薮漕ぎは想像以上に辛いものですが、
それもまた廃墟探索の醍醐味の一つ。
入り口脇の管理人室は、其れなりの廃れ具合でした。
思ったより荒れていないのは藪による目隠しのお陰かも。
背丈ほどもある藪を、ただひたすらに掻き分けて進む。
こんな時期なので虫達の動きも活発この上なく、
暑くても長袖長ズボンの装着は必須です。
ようやく辿り着いた一部屋、でも余りに普通な光景。
一応、時代を感じる事は出来ますが…。
部屋の雰囲気と釣り合わない悪趣味なベッドルーム。
当時は此れが最先端で、ナウいものだったのでしょうか?
取って付けたような岩風呂風味は如何なものか。
せっかくの広いお風呂場が勿体無いような。
6棟ほどの離れのうち、中が覗けるのは2つだけ。
真夏に炬燵は正直見たくなかった…。
ベッドメイクも其のままに、埃だけが積もって行く。
静謐な空間に聞こえるのは、遠く蝉の鳴き声。
いつかの夜に妖しく灯ったランプも、
今となってはもう二度と点くことは無い…。
ホテル街から外れた住宅地に、ひっそりと眠る廃旅荘。
カレンダーから推定される廃墟年齢は、約7年でした。
7年で藪がここまで生い茂るものなのか…。
離れ方式の為、各建物を確認しなければならず
敷地内を縦横無尽に薮漕ぎした記憶があります。
結局中が確認できたのは2棟だけで、
後は骨折り損という少々残念な結果でした。
こういった物件は全国各地で見られますが、
取り壊しも進んでおり、いずれレアになるかも…。
遠からず此処も住宅地へと姿を変える事でしょう。