2010/秋 訪問
ホテル ハ○イ
本日は生憎、小雨のパラつく陰気な感じの朝。
廃墟には御似合いな雰囲気だと独りごちながら、
撮影の準備を始める私が此処に居る訳で…。
ハ○イを謳った命名の割に、南国要素は欠片もなく。
せめて椰子の木の一つでも生やして欲しいもの。
建物と車庫が一体となった、昔ながらのモーテル様式。
ミニバンや背高軽ワゴンの駐車は想定外の時代。
フロント内部の散らかりは、ホテル系廃虚の定番風景。
逆に整然としていても、それはそれで何だか怖い。
室内緑化ゾーンに感じるのは、自然の静かなる進行。
朝の小雨が緑の艶をより高めてくれていた。
各客室には、面白い演出が有ったり無かったり。
吊り橋効果ならぬ掛け橋効果の効力とは、果たして?
演出に場所を取られて、ベッドルームが狭くなっちゃったの巻。
却って囲まれた空間の方が落ち着く、という人も居るけど…。
部屋のコンセプトが、いよいよ読めなくなってきた。
これは単なる私の勉強不足なのだろうか。
共用電話の横などに良く置かれていた、電話料金箱。
信号的な繋がりは無く、料金は其の人任せというアバウトな仕組み。
ケータイ全盛の今からは想像もつかない光景と言える。
探索を終えても空は未だ薄暗く、小雨は降り続いていた。
淡々と撮影機材を仕舞いながら、後ろの廃墟を一瞥する私。
――ああ、やっぱり廃墟には此の雰囲気が御似合いだ。――
街の中心部から少し外れた住宅地に、忽然と現れる廃ホテル。
今風な感じは無く、時代に取り残されたような様相は決して悪くありません。
内部も同様で、個別の見所は多くないものの、
全体的にまとった昭和的な雰囲気に好印象を受けました。
物件年齢を指し示す資料は生憎見つかりませんでしたが、
おおよそ10〜15年程度ではないかと推測。
ただし、建築年次自体はかなり古そうな気がします。
憧れのハ○イ航路という唄にもある通り、島国である日本にとって
海外、ひいては常夏のリゾート地といえば、いつの時代も憧れの的。
それを物件のコンセプトとし、非日常的な空間を演出出来ていたならば、
今回の物件は、廃墟と言う末路を歩まなかったのではないでしょうか。
現役当時には若干の演出が有ったのかも知れませんが、
少なくとも現状では、ハ○イを想起させるネタは皆無…。
潰れるべくして潰れた物件と言う事で、
今回のレポートを締めさせて頂きます。