ガラスに囲まれた運転室より、ごみピットを俯瞰する。
ゴミクレーンヲ巧ミニ操作シ、ピット内ノゴミヲ焼却炉ヘ投入セヨ…。
過酷な労働環境に晒されてきたバケットも、今や深い眠りの中。
恐らく、もう二度と目を覚ます事は無いだろう。
狭くて長い階段を下り、焼却炉の下部に到着です。
この辺りは光量が少ない上にジメジメしていて、陰湿感MAX。
職員は此の椅子に座りながら、燃焼の様子を窺っていたのか。
火の番は楽そうに見えても責任は重大、そして夏場は灼熱地獄。
星飛雄馬チックな男性が、整理整頓をさり気無く訴えている。
確かに何をするにしても、場が散らかってると効率は悪い。
時期は夏なのに、何だか寒々しい気がする事務所周辺。
ふと自らの歩みを止めた時、そこは全く無音の世界でした。
この表を見る限り、車両は35号車まで存在していた模様。
運転手に作業員、そして設備担当や事務方も含めると、
相当数の職員が、此の物件で働いていた事が分かります。
食堂でしょうか、当物件で唯一と言っていい明るい場所。
職員の憩いの場において、私自身も小休止させて頂く事に。
どうしても臭いとは無縁でいられない職場環境につき、
帰宅前の入浴タイムは、やっぱり欠かせないところ。
他の職員とのコミュニケーションも図れるし、一石二鳥です。
そんな訳で、そろそろ此処ら辺でお暇させて貰いましょうか。
聳え立つ煙突とプラント群が、一人歩く私の背中を見送ってくれました。
山奥と言う程では無いのですが、到る道が分かり辛く
何度か迷子になりつつも、ようやく辿りついた当物件。
この手の施設は、どうしても街から離れた場所に在るので…。
そのぶん探索環境は静かで、撮影に集中できる点はGOODです。
当物件が閉鎖された時期は、1997年頃とのこと。
私の訪問は2010年なので、約13年の廃墟年齢ですが、
今見ると、廃墟年齢以上に設備のヤレが目立ちます。
元々の閉鎖理由が老朽化なので、これは確かに納得するところ。
実はこういったゴミ焼却場の廃墟、全国的に見て割と多く存在し、
私も過去幾度となく接近遭遇、また訪問を果たしてきました。
では何故ゴミ焼却場が廃墟と成り易いのか、その理由はというと、
メインとなる焼却炉が、過酷な使用環境により早期に劣化すること。
ゴミ処理作業に穴は空けられないので、同所での施設建て替えより
別の場所への移転新設が多く、よく旧施設が残されること。
移転新設には莫大な費用が掛かる為、旧施設の解体については
費用不足で同時期に行う事が出来ず、後回しになってしまうこと。
立地や環境汚染等の問題で、跡地利用が難しいこと。
あと市町村合併により施設が集約され、不要な施設が閉鎖されること…。
憶測に近い部分もありますが、これだけ要因が有れば
確かにゴミ焼却場の廃墟が各地に多いのも、頷ける話です。
人が生活を営んでいる限り、ゴミは必ず発生するもの。
ならば其のゴミを燃やす施設も、必ず存在するもの
そして其の施設が廃墟となる事も、往々にして有り得るもの…。